「よしっ、これで完了っと」
「わぁ!ありがとうございますっ」

直して貰ったそれを見て嬉しそうにはしゃぐ彼女。
さっそく足を通して履き心地を確かめる。

「どうだ?ちゃんと直ってるか?」
「はいっ!元通りです」

向かいの彼は「それは良かった」と口元を緩める。

「それにしても、なんだってこんなに買い込んだんだ?女一人の荷物にしちゃ多すぎるんじゃねーの?」
「あ、えっと、私使用人をやっていて夕飯の買い出しに来たんです」
「使用人ねぇ、それにしてももう一人くらい連れてくるべきだと俺は思うぜ」
「いいえ、大丈夫です!」
「大丈夫ってアンタ…………」

彼がそう呟くとお約束といったように彼女は何かに躓いて転びそうになっている。
目の前の彼に支えられて何とか無事だった彼女。
彼は呆れたように言った。

「ぜってー前見えてないだろソレ」

彼女の目の高さと同じくらいの袋に入った食材達を指さした。
そして、支えていた彼女の体を離そうとしたとき…。

彼女の体は何故か後ろから引っ張られたかのように自分から離れて行く。
彼は目を丸くした。

「なっ、ネジ?」
「っ!?ネジ様……?」
「は?ネジ様?おいおいってことは……」
「シカマル、何の真似だ」
「はぁー……面倒くせぇ事になった」

彼、シカマルは重い溜息をつく。
どうやらと呼ばれた彼女は使用人で、どこの使用人かというと目の前で思いっきり敵対オーラを出しまくっている人物の家であり…。
なぜ敵対オーラを向けられているかというと、さっき転びそうになった彼女を抱きとめたからで…。
つまりシカマルは一方的に巻き込まれただけというか…。

「別に、道中転んで荷物ブチまけてしかも鼻緒が切れて歩けなくなってた所を見るに見かねて助けてやっただけだっつーの」
「………それは、すまない」

ネジは頭が痛いと言わんばかりに頭を押さえてを見る。

「買い物はオレが帰って来てからにしろといつも言っているだろう」
「すいません…!でも、ネジ様は任務でお疲れで……」
「買い物に付き合うくらい別にどうという事でもない。それに、お前は目を離すとすぐこれだ」
「すいません…!他の方に迷惑をおかけして日向家の……」
「そうじゃない」

そう言ってネジは彼女の腕に抱えられている荷物を自分が持つと言ってそのまま受け取る。
やっぱり、一人で行くなと言われてんじゃねーか。とシカマルは何故か少し安堵した。
そしてに対するネジの態度を見て少し面白そうだ。
目の前でネジの言葉に振り回されてあたふたしている彼女だが、何故ネジが一人で買い物に行かせたくないのかという本当の理由を恐らく理解していない。

並べばどちらも整った顔の美形に綺麗な髪。
おそらくの方が年下でシカマルと同い年くらいだろう。
見れば見る程お似合いだ。
忍びらしくない格好をしているところから、どうやら普通の人みたいだが育ちの良さそうな雰囲気から日向の使用人というより日向の許嫁と言った方がしっくりくる。
そもそも部外者を嫌いそうなあの日向家がわざわざ外から使用人を雇うなんて事があるのだろうか?
とシカマルは思考をめぐらすが、もちろん答えは出てこない。

「ほら、そろそろ帰るぞ」
「はい」

ネジにそう返事はするものの、彼女はシカマルに向き直る。
そしてペコリと頭を下げた。

「助けて頂いてありがとうございました」

そんな彼女を目の前につい頭をクシャリと撫でるシカマル。

「おう、気を付けて帰れよ」
「はいっ」

自分でも驚くくらい自然に手が出た。
そう、感覚的にはアレだ、ペットを可愛がる感じ、ああそうだ。
と己に言い聞かせるが、己に言い聞かせてももちろん意味は無い。
案の定ネジにこれでもかという殺気を向けられる。

しかしネジは何も言わずにまるで自分のものだと言うように彼女の手を取って歩き出す。
ネジに引っ張られる形で歩きだした彼女は慌ててネジに向き直ってなにやら楽しそうに話しかけている。

「っはは、なんか珍しいもの見た…かもな」

疲れたような表情を浮かべて溜息をつく。

(ネジにもああいう奴が居るんだな)

羨ましい、と思ったのは秘密。

繋がれた手はあまりにも自然で

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