新学期が始まってから1週間。
と付き合い初めてから2週間が経った。
2年にあがっても相変わらずとは同じクラスやった。
小5のときが転校してきてからずっと同じクラス。
逆にもうとクラスが離れるっていうのが想像できない。

新しいクラスになっても俺らは特に去年と変わらなかった。
俺は元々特別誰かと連んでるわけでもない。
は雰囲気とか話しかけやすいから黙って座ってるだけで声をかけられるタイプ。
自分からは積極的に絡みに行かへんけどクラスで浮いた存在でもない。
でも親友と呼べるほど仲が良い友達は居ない。
クラスが変わると友達も変わるタイプや。
ここ数年二人で居るのが当たり前になってて、もう周りも何も言うてこない。
去年散々付き合っているのかという質問に首を振ってきたから今更そのことを聞いてくる奴も居らん。
聞かれない限り言うつもりもない。
本当は、言うてやりたいけど。
のことを狙ってる奴らを一瞬で蹴散らせるし。
俺自身も顔も知らない女子に告られたりアド渡されたりすることも減るやろうし。
一石二鳥や。
ほんま、言ってやれたらどんなにええか。

「いやーん!光ちゃんったらそんな熱い目でちゃんのこと見つめちゃってー!」
「あんたらええ加減にせえやほんま。ほっとけ言うとるやないですか」
「せやかてやっと思いが通じ合ったのよ!?」
「お互いのアプローチに気づいてへんでやたら遠回りしてるの1年も見せつけられてたこっちの身にもなってみろや」
「俺は誰より先にが光のこと好きって知っとったで!なんたってに相談されとったからな!」
「ユウ君。一応言うとくけど、光ちゃんとちゃんのこと気づいてなかったんはユウ君だけやで」
「は!?」
「ほんま、も器用なことしてくれるわ。よりによって何も分かってへんユウジに相談するとか」
「だ、だって光くんがそういうのは小春先輩かユウジ先輩に聞けって」
「どうしてアタシに言ってくれなかったのおおお!」
「ちゅーか財前、自分で話ややこしくしとるとかどんまいやな」

謙也さん、後で殺す。
目の前で繰り広げられる会話に思わず青筋を立てる。
部活でこんな状況やから、他の奴らに言うつもりはなくなった。
ホンマ、ムカつく。
好き放題いいやがって。
というか、確かにいつしかに「恋ってなにかな」と聞かれたとき驚いて丸投げしたけど…。
マジでユウジ先輩に聞きに行っとったんか。
せや、に冗談言うても通じへんのはよう分かってることやん。
あのときの俺どんだけテンパってたんや。

「ええからは早よ着替えに行け。帰られへんやん」
「あ、うん。ごめんね」

これ以上この話が続いたらこの先輩等が何言い出すかわからんからを着替えに行かす。
テニス部の人にだけは付き合うたということを報告した。
主に謙也さんに。
の好きな人として噂されとったし、ミクスドペアだからってやたらとのこと構うし。
報告した途端お祭り騒ぎ。
どっちから告白しただのなんだのしつこいし。
2週間経ってもまだ収まらない。
おかげで部活中に少しでもに話しかけたりするだけでキモい視線を向けられる。
業務報告ですらまともに出来ない。
何よりそういう風に茶化されるのが苦手ながこの状況に耐えられるわけもなく。
最近部活中でなくても俺との会話がぎこちない。
が付き合ってから意識しすぎて変な行動を取ることはある程度覚悟していた。
でも、それよりもこっちのほうがあかん。
このままテニス部以外でもこんな状況になったらあいつ学校来なくなるんとちゃうかとか結構真面目に思う。
ああ、疲れる。
さらに部活のほうではただでさえキャラの濃いテニス部にもう二人強烈なのが加わって疲れるどころではない。
付き合い始めた、そうは言っても正直周りが茶化してくるようになったこと以外なにも変わらない気がする。
それどころかつきあう前よりスムーズに会話が出来なくなっている気がする。

「財前ーにあたったらあかんやろ」
「別にあたってへんし。いつも通りや」

あたってるつもりはない。
にはいつもこんな感じやろ?
今更態度変えるとか、おかしいやん。

さっさと着替えを進めながらチラリと謙也さんの方をみる。
目があって、すぐさま反らした。

「財前、より他の女子のほうが扱い優しいんとちゃう?」
「は?突然なんですか」
「いや、今唐突にそう思ってん。財前のへの態度ちょお、キツいなって」
「今更すぎません?」
「まあ、なあ。でも自分ら彼氏と彼女やろ?」
「はあ…。彼女居らん謙也先輩に言われても」
「なんやて!」
「ほな、お先です」

なんで、突然意味深なこと言い出すんやあの人。
まさかが謙也さんに俺の態度がキツいとか相談したとか?
後ろでなんかぎゃーぎゃー言うとるのを無視して俺は部室を出た。
が戻ってくるのを待つ。
別に付き合う前から変わらない。
いつものことや。
手でも繋いで帰ったら少しは恋人っぽくなるんやろか。
そろそろ手ぐらい繋いでもええやろ?
なんか、違いが欲しい。
今までの関係とは違うんだと実感したい。

「光くん、ごめんね。帰ろう?」

着替えを終えて戻ってきた
少し首を傾げてくるのが可愛い。
言わへんけど。
「ん」なんて気のないような返事をした。
いつもの帰り道。
付き合い始めてから、会話が減った。
少しもやもやするけど、意識されてると思うと悪い気もしない。
でも、やっぱり物足りない。

「なあ、
「なに?」

あかん、いまめっちゃドキドキしとる。
学校から少し離れたところで一度会話が途切れた。
少しの沈黙の後に話しかけた。
今までと同じ帰り道、でも昔とは違う会話。
なんか、めっちゃ恥ずかしい。

「手」
「手?」
「…繋ぐ?」
「え、あ…」

の顔がみるみる赤くなっていく。
多分、俺も赤いけど。
めっちゃ顔熱い。
少しの間が無性に長く感じて返事を聞く前にの手を取ろうとした。

でも俺が動く寸前にの腕が動いた。
ぶんぶんと横に振られる手。

「い、いい!ダイジョウブ!」
「え」

予想外すぎる言葉に一瞬言葉の意味を理解出来なかった。
ここは照れながら「うん」とか言う場面やろ。
あかん、俺がダイジョウブやないんやけど。
結構勇気を出して言った分ダメージ大なんやけど。

俺の反応をみてなにか悟ったのかが一瞬固まった。
ああ、あかん。
まさか断られるとは思ってなくて多分顔にでた。
どう、誤魔化す。

「いや、謙也さんにへの態度が悪いって言われてん」
「え?あ、そ、そうかな?」
「なんや、お前が謙也先輩に相談したんかと思ってたのに」
「え?してないよ!」

誤魔化しついでにさっきの事を聞いてみたけど考えすぎやったか。
あー、ほんま、調子狂う。
さっきから俺一人で勝手にぐるぐるして落ち込んでへん?
ダサい。

が、喋らなくなるから」
「うん?」
「俺にも原因があるんやろかって、ちょっと思っただけや」
「そ、そんなことないよ!」
「じゃあ、いつもみたいに話せや。調子、狂う」
「あ、うん」

格好がつかない。
こいつは、いつも俺の予想の斜め上を行くから。

「あの、ね。謙也先輩に相談に行ったらね、それは財前に言えって言われたからね、言う、ね?」
「…ん」
「緊張して、光くんとうまく喋れなくて」
「知ってる」
「でもね、いま、なんかね、すごく幸せ」
「何も変わってへんのに」
「変わったよ!光くんはわたしの彼氏だよ」

俺、なにもしてへんのに幸せとか。
お前の幸せはレベルが低いんや。

「さっきみたいにね、わたしへの態度とか心配してくれるのもすごく嬉しい」

「光くんがわたしのこと彼女として扱ってくれることが、嬉しい」

「でも、だから、緊張しちゃって」

ほんまに。
こいつは、どうしようもない。
さっき、手繋ぐの断った奴がいう台詞やないやろ。

「アホ、お前が静かだとこっちが緊張するやろ。アホ、アホ」
「うん、光くん、顔赤い」
「お前に言われたくない」

ほんまに、しゃーない奴や。
それでも好きやから、俺もどうしようもない。
もう、ええよ。
しゃーないから、お前のペースに合わせたるわ。

お前のペースに合わせたら、いつ頃手繋げるようになるんかわからんけど。

しょうがない。
に幸せだと言われて、俺も幸せだと一瞬でも思ったから。

今はまだ、このままで

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