「なあ、財前」
「何ですか」
「俺、やっぱり嫌われてるんやろか」
「……あー」
部活が終わって俺に声をかけてきたのは部長や。
俺たちの目線の先には謙也さんの後ろに隠れてこちらを伺っている。
多分俺と一緒に帰るから待っててくれている、筈。
十中八九がこっちに来ないのは俺の隣に居る部長が原因だ。
ここ数日前からは部長を避けている。
というより、怯えている。
突然の事に部長はものすごくショックを受けているらしい。
あ、部長が勇気を振り絞ってに手振ってる。
……ハッ。
の奴怖がって顔も隠したわ。
部長、ほんま同情したる。
まあ、その原因を作ったのは俺と謙也さんで。
別に偶然という訳でもなく、故意でやったんやけど。
正直がここまで信じ込んでくれるとは思わなくて、そこんとこだけ同情するわ。
そら、なあ。
学校1モテる男やし、部長。
最初に言い出したのは謙也さんだった。
「、白石の事どう思う?やっぱ格好ええか?」
「え?あ、はい。格好いいと思います」
「あかん、。もう白石の毒牙にかかっとるわ」
「ど、毒牙!?」
「せや!あいつ、左手に包帯巻いとるやろ。なんでか分かるか?」
俺はそのときちょうど近くに居ったからおもしろそうやったし、話に参加しただけや。
こういうときだけ謙也さんとは気が合うらしい。
いや、謙也さんは割とヘタレやからに嘘吹き込んでその後に嘘やでって言うつもりだったのかもしれない。
「怪我をしてるから…?」
「ちゃう。あいつの左手はな、実は女の子を虜にする体質でな…」
アホらし。
いつもなら、絶対そんな話に乗るなんてありえへん。
大体、謙也さんはセンスがないねん。
そんな見え見えな嘘でが………
「えー!そうだったんですか!」
あ、こいつもアホなの忘れてたわ。
謙也さんが企んでるのは恐らく部長のCメージダウンやと思う。
だから、黙って聞いとる。
なんたって学校1モテる男やし、部長は。
「白石、あの左手で女の子を惑わして泣かせまくってるんやで」
「白石部長がそんな人だったなんて…」
それにしても、平然を装うのも疲れてくるほどアホらしいわ。
なんや、このアホ二人は。
こいつらいつもこんなくだらんこと話してるんか。
「で、でもそれって本当に本当ですか?間違いってこともあるんじゃ……」
「ほんまやって。な、財前?」
多分、謙也さんはここで俺がいつも通り
「先輩、やっぱアホですわ」
とか言うと思ってたんやろ。
というか、目が突っ込んでくれと訴えている。
……ウザ。
「あー、せやで。、気をつけなあかん」
「ほ、本当なの!?やっぱり、本当だったんだ……」
「ちょ、財前」
「何ですか」
「…な、何でもない」
先に言い出したんは謙也さんやし。
つかはやっぱりって、部長にどんなイメージ持ってたん?
「あ、部長が女の子と話してます!あの子も……助けてあげたいけど、近づけないです」
「お、おお。そうか」
謙也さん、おもいっきし引いとるわ。
この人のこと恋愛感情好きなのか微妙そうやって最近思っとったけど、案外当たってるかもしれない。
まあ、確かに普通の人は引く場面やけどな。
恋は盲目。恐ろしい。
「俺、何であんな嫌われてるんやろ。何かしたか聞いてくれると助かるんやけど、財前」
「聞いても無駄だと思いますけど」
「そんなに修復不可能な程嫌われてるん!?」
「部長が包帯取ったら、まあ変わるかもしれないですわ」
「な、なんで……?」
に寄ってくる男は俺が引き剥がす。
部長は別に寄ってきてないけど。
たまには保険も必要や。
恋は盲目。あたりまえや。